新サービス「SASAGE.AI」は アパレルEC運営者にとっての救世主となるのか

 オンラインで買い物することが当たり前になった現在、EC(Eコマース)が登場した90年代後半と比較すると、消費者が求めるものは大きく変化した。多くの企業がECに参入し競争が激化する中、サービスの充実とともにECの欠点を補う細やかなフォローができているかが、売り上げを伸ばす鍵になっている。 アパレルECを運営するにあたり、欠かすことができないのが「ささげ業務」である。ささげとは、「撮影(さつえい)」「採寸(さいすん)」「原稿作成(げんこうさくせい)」の頭文字をとったもの。 現状のささげの現場では、カメラマンが一点一点商品を撮影し、運営スタッフがメジャーで採寸を行い、ライターが商品を見ながら原稿を執筆するというのが一般的な流れだ。加えて着用カットを撮影する場合は、モデルの手配からスタジオの確保も必要になる。  これらの商品写真・原稿・採寸データが、消費者の購買動向に大きな影響を与える重要な要素であることは明白だが、掲載点数が増えれば増えるほど膨大な時間とコストがかかり運営側の負担が増えることになる。いかにクオリティを保ちながら効率化していくかが、多くの担当者の長年の課題になっていた。 こうした状況の中で注目されているのが、株式会社メイキップが2018年12月にローンチした「SASAGE.AI(ササゲAI)」だ。人工知能(AI)を活用し、ささげ業務を効率化するサービスで、撮影された商品画像をクラウドにアップすることで、①モデル着用画像、②洋服各部位の寸法、③商品概要の作成の自動化が可能となるという。

導入のしやすさと3つのメリット

 SASAGE.AI導入に際して機材一式を揃える必要があるが、WEBカメラや採寸用のドットシート、洋服を固定するためのマグネット等、必要最低限のシンプルなものだ。
具体的な手順としては、ドットシート上に商品を吊るして撮影を行い、クラウドサーバー上に送付する。するとAIが画像を解析し、寸法データと原稿、モデルの着用イメージが自動生成される。
 導入のメリットとして挙げられるのは次の3点。1つめがコストの大幅削減、2つめが時間短縮・効率化、3つめがECサイトのクオリティ向上と集客力アップだ。それぞれ詳細をみていくことにする。
https://sasage.ai/
1. コストを大幅にカット
 通常のささげ業務では、スタジオレンタル料、カメラマン、モデル、ライター、採寸で1アイテムあたり3,000~5,000円程度かかるのが常識だった。「SASAGE.AI」を導入すると、モデル画像の生成は1画像あたり600円(税別)、採寸は1画像あたり50円(税別)、商品説明文の作成は1画像あたり200円(税別)で自動生成が可能となる。つまり、一般的な相場の3分の1から5分の1程度の費用で、撮影・採寸・原稿のすべてを行うことができるようになる。
2. 時間短縮、効率化
 人員を導入してささげ業務を行う場合、撮影・採寸・原稿納品がすべて完了するまで多くの時間がかかっていた。「SASAGE.AI」を用いればその工数が軽減し、1/3程度の日数で納品が可能となる。モデルのアサインやスタジオの確保の手間がなくなり、原稿も最低限のリライトのみで作成できる。
 3. ECサイトのクオリティ向上と集客力アップ
 コストがネックになりモデルの着用カットを採用していないという企業においても、SASAGE.AIを導入すれば低コストでモデル着用イメージを作成することができる。また、人の手に委ねることで生じていた採寸時の誤差についても改善が可能だ。作業者によって生じる採寸の差を、AIを用いることで最小限にしていく。

製品への思いと今後の広がり

 どのようにして「SASAGE.AI」は生まれたのか。企画・開発を担当する株式会社メイキップ取締役の鈴木基芳氏に話を伺った。「このプロダクトが生まれた背景には、ささげの現場をAIの力でよりよくしたいという思いがあります。今まで人の手で行なってきたことを否定するのではなく、最新の技術を使うことで、労働集約的なところからもっと生産性の高い業務に移行していくことができるのではないかと考えています。
 アイデアベースから製品化にいたるまでかかった期間は約1年。いかに早くプロトタイプを作るかという点でスピードを第一に優先してきましたが、現在は製品としてのクオリティを磨き上げている段階です。採寸もモデルも、ある一定の基準をクリアしたカテゴリーから製品化しているのですが、それは最初から完璧を目指すのではなく、様々な経験値をもとに改善していく方が、より精度の高いものがつくれると確信しているから。対応カテゴリーが少ない中スタートしたのには、そのような理由があります。そして、ささげ業者ではない僕たちがこういったプロダクトを開発したというところにも意味があると思っています。業界の外側にいたからこそ、今までの常識に捉われずに新たな提案ができているのだと思います」

 現在、SASAGE.AIが対応するカテゴリーは、採寸ではトップス、ボトムス、ワンピース、アウターの4カテゴリー。モデルではワンピースの1カテゴリーだ。今後、徐々に対応カテゴリーを増やしていく予定だという。
 「サービス自体スタートして間もないということもあり、全てのカテゴリーに対応できているわけではありません。なるべく早くお客様のニーズに応えられるよう、対応できるカテゴリーや範囲を増やしていくことが現状の課題です。また、お客様にとっては既存のオペレーション自体を変えることになるので、その移管作業をどうやったらスムーズに行えるかも重要な点です。こちらも場数を踏んでいくことによって、より精度の高い組み込み方ができるのではないかと考えています。
 2018年12月のローンチ以降、大手ECモールや二次流通系ECなど、すでに複数社が導入にむけた動きを進めている。原則的にはSASAGE.AIのフルパッケージ(撮影・採寸・原稿)での導入を推奨しているが、状況によって撮影+原稿、採寸+撮影など、要望に応じた組み合わせが可能だという。鈴木氏は、「現場でささげと向き合っている方々にこそ、一度このサービスを試してもらいたい」という。
「今後、80%程度のアイテムが、SASAGE.AIを使うことで効率化することができるようになります。商品の大多数を占めるベーシックなアイテムはSASAGE.AIを使い、デザイン性が高い特殊なアイテムなどは人の手で作業を行うなど、作業を分担することで人の手をつかうべきところやコストをかけるべきところに注力することができます」
 SASAGE.AIを導入することで、今までささげ業務で当たり前のようにかかっていたコストや工数を削減し、浮いたコストや時間をしかるべきところに再分配していくという流れをつくりだすことができるというわけだ。
現在のEC運営フローをより効果的に、効率的にしていきたい担当者にとって一考に値する注目のサービスである。

https://sasage.ai/